特殊学級と普通学級

特殊学級と普通学級。ここのところ、この2つに関わる“私見”についていくつかコメントがついたので、ちょっと補足。

普通学級で「個別の指導計画」は作られているか?

特殊学級は、在籍する児童生徒の状態に応じて(かなり乱暴な言い方をすれば)どんな内容・方法の授業を行ってもよいと認められている学級です。*1普通学級では『学習指導要領』に定められた内容の授業を行うことが義務付けられている*2点と大きく異なります。
そこで、特殊学級がどのような授業を行うか、学校・学級の設置者(=責任者)である市町村教育委員会が把握する必要と、保護者への説明責任を果たす側面から「個別の指導計画」を作成するのです。
霞の市では作成・提出が義務付けられており、同様に義務化している市町村がかなり増えてきています。
一方、普通学級で「個別の指導計画」を作っているかというと、答えは「No」です。普通学級は集団での指導が大前提であり、先に述べたように指導する内容は『学習指導要領』で既に規定されています。
やはり保護者への説明責任の観点からシラバスや達成目標を作成する学校がだいぶ増えてきましたが、それらは「学級の○○パーセント以上の児童生徒が理解できる」という視点のものです。とても『個別の指導計画』と呼べるものではありません。
授業担当者*3の裁量で、プリントなどの補助教材を用意したり、授業の中でほんの少しでもその子と関わる機会を増やそうとする“配慮”は行っていますが、月・年度単位のスパンで計画的に行われているものではありません。
障害を「個性」と言えるのは、かなり余裕のある大人の感覚です。日々数十人の子どもたちと対峙しなければならない教師に、なかなかそんな余裕は持てません。「個性を尊重しなければ」と頭では理解していても「そのための授業研究や教材作りはいつやればいいの!?」というのが学校の現実なのです。

障害のある子ども自身が普通学級に行きたがるか?

こういうテーマでの統計は存在しませんし、憶測で語っては誤解を生じますので、あくまで霞自身の実体験・実績の範囲内で書きましょう。
霞がこれまでに特殊学級で関わってきた生徒は約100名。そのうち、「私は普通学級に行きたいんだ」と意思表示していた生徒は5名。普通学級から「私は特殊学級に行きたい」と入級してきたのは2名。つまり、特殊学級に在籍した生徒のほとんどは、特殊学級か普通学級かというレベルでの判断・意思表示はしていませんでした。そういう判断ができる生徒は特殊学級に来ない、と分析するのが正しいのかもしれませんが…。
ただ、一つ言えるのは、特殊学級を嫌う理由は「イメージ」であるということです。“他のみんなと違う”“どういうところかわからない”という、漠然とした不安感や世間体がもとになっています。これらは生徒自身の感覚というよりも、地域の雰囲気・考え方に大きく影響されます。
残念ながら、未だに障害のある人たちに対する差別・偏見は日本中に残っているのです。実際に授業を体験した生徒自身や参観した保護者は相当な確率で「特殊学級ってこういうところだったんですね。」という感想を話されるのが、何よりの証拠です。

「障害」と「子供」

差別・偏見といって思いついたので…
字の印象が悪いという理由で「障がい」「障碍」という表記をされる方がいらっしゃいますが、そのご本人が「子供」という表記を平気で使っているのには、がっかりさせられます。「供」という字の意味について、みなさん、どれくらいわかっていらっしゃるのでしょうか。

*1:学校教育法75条

*2:法的に厳密に解釈すると“義務”ではないのですが、現場の運用では事実上“義務”になっています。

*3:小学校なら学級担任、中学校なら教科担任