Bさん、固まる…

授業交流の体育での話。今日は「リレーのバトンパスをしよう」という課題でした。準備運動まではちゃんとやっていた2年生のBさんの動きがぴたりと止まりました。

くみちゃんは小学校時代、通常の学級で過ごしていました。家ではうるさいくらいしゃべるのに、学校では全くしゃべらないという、場面緘黙といわれる発達の偏りが認められる女の子です。
通常学級では、じっとしている子は“手のかからない子”として評価されるからではないでしょうが、課題に自信を持って取り組める見通しがなければピタッと固まってしまう女の子です。また「どうしよう」「どっちにしよう」と『判断』は一切しません。なぜなら、50%の確率で“間違ってしまう”からです。間違うくらいならやらないほうが良いので、彼女は『判断』しないそうです。

一緒にチームを組むように指示された女の子たちは「先生、Bさんは走るの?」と聞いてきます。Bさんは瞬きさえ止めて固まっています。霞は女の子たちにこう話しました。
「Bさんは『じぶんでもできる』と思えたときに動き出せるんだ。まずは君たちだけでバトンパスをして、Bさんに見せてください。もしかしたら、この時間、Bさんは全然走れないかもしれないけど、そのときはごめんね。」
…結局、Bさんはそれから43分間、校庭の片隅でピクリとも動きませんでした。そして“嵐”をやり過ごしたのです。チャイムが鳴り、教室へ戻るみんながBさんの脇を通り過ぎます。霞が「Bさん、教室へ戻りなさい。」と『指示』を出すと、Bさんは昇降口へ駆け出しました。