Bくんの自立活動

生活年齢相応の受け答えができ、冗談も交えながらの会話が成立し、正義感あふれる言動がとれるBくん。でも、彼は文字の読み書きができていませんでした。そんな彼の自立活動のテーマは、どんなものがいいんだろう…試行錯誤の第一段階として「基礎的学力」を設定しました。
まずは、文字の読み書きです。Bくんは「紙芝居を読みたい!」と希望していたのですが、ちょうどいい紙芝居が見つからなかったので、倉庫にあった絵本「ねずみ君のチョッキ」*1を読ませてみました。この絵本、ねずみの着ていたチョッキをだんだん大きな動物が「いいチョッキだね。ぼくにもきさせてよ。」と借りていって、最後は象が来てしまうというお話。同じフレーズが何回も何回も繰り返されるストーリーでした。
はじめのうちは、文字を追うのではなく、教師の範読の冒頭に出てくる単語から連想されるフレーズを喋ってしまうBくんでした。(例:“いい”なぁ、貸してよ。いいチョッキだね、僕も着たいなぁ。)でも、何度も同じフレーズの繰り返しなので、徐々に文字を追うようになり、最後の象が出てくる場面ではきちんと読むことができました。
…“読めた”というよりも、教師の範読を最後まで記憶できたというほうが正確かもしれません。でも、Bくん自身は“読めた!”という感覚になっており、大きな進歩であることに変わりはありません。
続いて行ったのが「文字の導入」。今回は初めてということで、ネコ・イヌ・タヌキ・ヘビのイラストの輪郭にある“通路”からはみださないように線を書く*2、という課題です。はじめのうちは何となく線を書いてしまい、何ヶ所もはみ出してしまっていたBくんでしたが、霞が「こことここで壁にぶつかっちゃったね。」と指摘すると、どんどん慎重に線を書くようになり、ヘビのイラストでは1ヶ所もはみ出さずに書くことができました。
実際にやってみてわかったのですが、Bくんは今“知的好奇心”がとても強く、“できた”“わかった”という体験を欲しているようです。授業が終わって、Bくんが「霞先生の自活*3、おもしろかったぁ!」と言ってくれたことが、とても嬉しかった…。こんな感覚、久しぶりです。

*1:題名はうろ覚え。後日訂正します。

*2:今日はクレヨンを使いました。本当は鉛筆を使いたかったのですが、養護学校小学部に通う子どもって、筆箱を持ってきていないんですね。うっかりしていました。

*3:本校では『自立活動』のことをこう呼んでいます。