進路研修会

テーマ
障害者自立支援法によって施設はどう変わっていくのか…期待をこめて」
講師
近隣の知的障害者通所授産施設の施設長
  1. はじめに
  2. 障害者自立支援法」が何故今なの
    • 【昭和30年代】「精神薄弱者福祉法」…措置制度の確立・隔離的入所施設主流
    • 【昭和40年代】コロニー全盛時代…「授産施設」登場
    • 【昭和50年代】大規模施設から中小施設へシフト〜措置制度の中でのぬるま湯時代に突入<高度経済成長時代
    • 【昭和60年代〜平成7・8年】地域福祉への流れ…入所から通所へシフト〜“護送船団方式*1
    • 【平成10年代】措置制度から支援費制度への制度改革が始まる〜戦後60年近く続いてきた措置制度の破綻(財政破綻)…「障害保健福祉施策の改革グランドデザイン(試案)の提示<平成16年10月>…『障害者自立支援法』の先達として
  3. 障害者自立支援法」の光と影
    1. 光の部分
      1. 障害種別間のサービス格差の是正←身体・知的・精神
      2. 障害サービスの地域基盤に大きな水準の差を是正←公費の裁量的経費を義務的経費へ(公費の補助から公費の負担へ)
      3. 働く意欲のある障害者が必ずしも働けていない←施設からの一般就労者=年間1%程度〜福祉施設機能の強化を目指す。(新たな就労支援事業の創設、雇用施策との連携を強化)
      4. 自立と共生の地域社会づくりの強化←規制緩和・遊休施設の再利用・入所施設の自然増の抑止・グループホームやケアホームへの移行促進
      5. 施設・事業体系の再編←多くの規制緩和*2と競争原理、市場原理の導入(優勝劣敗の原理)〜コスト意識「少ない費用で豊かな暮らしを創り出す出す知恵
    2. 影の部分
      1. 利用者負担←サービス費用の1割負担。応能負担限りなく応能負担に近い応益負担(定率負担制度)へ
      2. 事業者負担←サービス費用の日割り化*3社会福祉法人負担*4…定員の弾力的運用(2割増まで“黙認”)をしてもカバーしきれず赤字に。
      3. 障害程度区分の考え方←障害のバリヤを取り除いたことにより評価判定が非常に困難に〜コンピュータによる『判定』を市町村障害者程度区分認定等審査会で“再判定”
      4. 地域での受け皿←働く場の確保、継続していく仕組みの構築
  4. 施設は、何処へ行くの…

 この講師、「障害者自立支援法と障害者福祉の将来展望」(この資料そのものはネット上にないのですが、こちらの資料がほぼ同様の内容を示しています。)を根拠に、障害者自立支援法を非常に肯定的にとらえていたのが印象的でした。
 ただし、『地域での受け皿』というところでは違和感を感じました。講師は「特定子会社を持つ大企業を相手にするように、組織体対組織体のつながりというシステムを推し進めるべき。施設や学校関係者と企業の経営者・人事担当との“個人のつながり”で職場開拓をしていくという手法は消える方向にある。」と発言したのです。オシムの戦術論ではありませんが、システムが問題を解決するのではなく、問題を解決するためにシステムを選択すべきだと、私は思うのですが…。
 中学校特殊学級で長くやってきた霞は、はっきり言って特例子会社をあてにしていません。まず、どうしても障害者に対して“一般論”で対応する嫌いがあります。また、同じ職場に障害者が多数在籍するがために、障害者同士によるトラブルが起きることもあります。*5
 講師が否定していた“個人のつながりによる職場開拓”は、就労を希望する障害者に対する支援・配慮を十分に踏まえた雇用につながるし、「自宅から通えるところに就職させたい」と願う保護者の存在を考えると、大企業が少ない地域においてはまだまだ有効な手段だと思うのですが…。
 また、この講師が施設長を務める施設は、平成19年度から「自立訓練(生活訓練)事業」と「就労移行支援事業」の2本立てとなり、22名定員の「就労移行支援事業」から平成23年度には年間10名の一般就労者を出す…という計画が示されました。あと5年でそんなに景気が回復しているとは思えないのですが…。
 それに、日本の企業の実情をみれば、かつて養護学校特殊学級の卒業生が就労していた比較的単純な軽労働の職種はほとんど海外に流出しているはずです。今から20年近く前に、おもちゃの(株)タカラの人事担当者と話をしたことがあるですが、その時すでに、部品の組立・袋詰めといった工程は東南アジアの現地法人で行っているため、国内で障害者が担当できるような軽作業はないということだったのです。
 そういった事情があるから、大企業は「特例子会社」を作っているのだ…という理屈も成り立つのですが…。もうこうなると、よくわかりません。

*1:国、利用者・家族共に手を携えて福祉の御旗を掲げて、夢・理想の国へ(破滅への戦場)と突き進んでいた。

*2:1.運営基準 2.施設基準 3.運営主体 4.法定外事業(小規模作業所)所が都道府県障害福祉計画に基づいて新体系サービス事業へ計画的に移行

*3:月に数日“欠席”すると、その分施設の収入が減る。

*4:法人格を取得している運営主体は、費用の25%を負担する。

*5:天真爛漫なダウン症者の振る舞いに自閉症者が苛立ってちょっかいを出し、それに対して知恵が働くダウン症者が“いじめ”で報復する…なんて状況、少なくないんです。