母が「振り込め詐欺(未遂)」にあいました…

昼休み、職員室で資料整理をしていたら携帯がなりました。見慣れぬ固定電話の番号…1度目は無視しましたが、すぐににまたかかってきたので不審に思いつつ出てみると…
○○氏「“五つの霞”さんですか?」
霞「あ、はい…」
○○氏「私、□□県警△△署の○○と申します。」
霞「あ、はい?」
○○氏「今、お母様が銀行で多額の現金を振り込みなさろうとしてまして。」
霞「…はい!?」


「世の中には簡単に騙されちゃう人が多いんだね」などと嘲笑していた振り込め詐欺でしたが、“うちの話”になっちゃいました。
母は年金生活10年目。毎日のように外に出て、決してボケているわけでもなく、もちろん振り込め詐欺の手口だってテレビで見ています。でも、いろいろな偶然や思い込みが重なるとあっけなく騙されてしまうわけです。
幸い、行員さんが声をかけてくれたこと、振込先が詐欺に使われた形跡があって既に凍結されていたことなどなど、幸運もあって実害(200万!)にはあわず、笑い話で済みましたが、紙一重でした。


詳しいいきさつ(相当長文です。)を「続きを読む」に書き記しておきます。

5月11日夜

実家に“番号非通知”の電話がかかる。食事の支度をしていた母は、慌てて電話を取る。
男A「あ、俺。ゴホゴホ…*1
母「霞かい?」
男A「あぁ、霞、霞。ゴホゴホ…。」
母「ずいぶん声がかすれてるじゃない。」
男A「クーラーをかけっ放しで寝たら風邪をひいちゃって。鼻水が滝のように出てるんだよ。」
母「病院に行かないのかい?」
男A「明日、行く。実は携帯を落っことしちゃって。番号が変わったんだ。新しい番号は080…」
母「わかった。ちゃんと病院に行くんだよ。」
男A「お金、ある?」
母「大丈夫よ。ちゃんと生活できてるし、病院に4軒行ってたってちゃんとやっていけてるから。」
男A「じゃあ、明日また電話する。」

5月12日朝

再び実家に“番号非通知”の電話がかかる。
男A「実は金が必要なんだ。」
母「どうしたの?」
男A「横浜の友達が事業を立ち上げることになって。で、その保証人になってくれって言われて。どうしても断りきれなくて、ハンコを押しちゃったんだ。」
母「なんでまた保証人になんかなっちゃったんだい!」
男A「で、その友達の事業が失敗しちゃって、800万の借金ができちゃって…」
母「そんな大金…」
男A「いや、別の友達と2人で保証人になったから、俺の分は200万なんだ。用意してもらえるかな?」
母「…」
男A「(やや涙声で)今日の10時までに振り込まないと…」
母「親ダヌキさんは、このことを知っているのかい?」
男A「(激しい口調で)こんなこと言えるわけないじゃないか!俺だけの秘密だよ!」
母「じゃぁ、これから郵便局に行って…」
男A「お金が準備できたら電話して。」

5月12日9時30分過ぎ

母は最寄りの郵便局で簡易保険*2を担保に200万円を借り受け、男Aの携帯に電話する。
男A「じゃぁ、銀行に行って。車を銀行の駐車場に入れたら、車の中から友達に電話して欲しいんだ。番号は…」

5月12日9時45分過ぎ

動転している母は、電話することなく銀行の店内へ。振込票に書き込もうとするが、金額欄や氏名欄を書き間違い、何枚も書き損じる。その様子を見た行員が声をかける。
行員「お振込ですか?」
母「息子に振り込まなきゃいけないんです。10時までに間に合いますか?」
行員「それ、振り込め詐欺じゃないですか?」
母「もういいです。」
母は銀行を出て“友達”(=男B)の携帯へ電話。
男B「金は振り込んだか?」
母「伝票がうまく書けなくて…。銀行員にはいろいろ聞かれるし…。」
男B「もうその銀行じゃだめだ。違う銀行から振り込め。」
母「でも…」
通報を受けた△△署の生活安全課から警官2名が銀行へ到着。
○○氏「おかあさん、息子さんへ振込みだって?」
母「10時までに振り込まないと…」
○○氏「息子さんの携帯の番号が変わったんだって?」
母「携帯を落としちゃったって…」
○○氏「今まで使っていた番号にかけてごらん。息子さん、きっと出るから。」
母「だから、携帯をなくしちゃって、番号が変わったって…」
○○氏「いいから、いいから。かけてごらんって。」
母「でも…息子は…(半ベソ)」
○○氏「じゃあ、番号教えて。こちらからかけてみるから。」
プルルルル…霞の携帯が鳴る…
○○氏「“五つの霞”さんですか?」
霞「あ、はい…」
○○氏「私、□□県警△△署の○○と申します。」
霞「あ、はい?」
○○氏「今、お母様が銀行で多額の現金を振り込みなさろうとしてまして。」
霞「…はい!?」
○○氏「状況、おわかりになります?」
霞「十分分かりました。」
○○氏「お母様と替わります?」
霞「替わってください。」
母「霞、今どこにいるの?」
霞「(わざとゆっくりと)学校〜〜。」
母「元気なの?風邪ひいてないの?」
霞「元気だよ〜。どう?落ち着いた?状況わかった?」
母「うん…」
霞「じゃあ、ちゃんとおまわりさんの質問に答えてね。おまわりさんに替わって。」
○○氏「すみません。念のために確認します。五つの霞さん。昭和●●年●月●日生まれで間違いありませんか?」
霞「はい。いろいろとお世話になります。よろしくお願いします。」

教訓

「おじいちゃん」に比べ「おばあちゃん」が振り込め詐欺にあいやすいのは、母親の息子に対する愛情度が関係しているのではないか。(分析:親ダヌキ)
娘からの電話だったら同性ということで結構冷静に対応できるようです。これが息子からだと疑うのはかなり難しいみたい。親ダヌキも「仔ダヌキから『お金を用意して』って電話があったら、信じちゃうだろうなぁ」としみじみ話しておりました。


あと、詐欺にあうかどうかは1発目できまることがよくわかります。一度思い込みがあると、途中でその思い込みを疑うことは相当の困難があるようで。今回は、霞が4ヶ月以上実家に電話をしておらず、職場が変わってからも新しい職場についてほとんど知らせていなかったため、母は「いつ電話をくれるのかしら…」と心待ちにしていたとか。そういうタイミングで弱った声で「俺…」と言われ、すっかり思い込んでしまったと。

夜、職場からの帰りがけに実家に立ち寄り、母の顔を見てきました。相当ショックを受けたようで、布団の中で憔悴した表情をしていましたが、事の顛末を私に話しているうちにだんだん顔色も良くなり、「笑い話で済んで良かった。」と元気を取り戻してくれました。



これからは、何も用事がなくてもたまには実家に電話を入れることにします、はい。

*1:霞が実家に電話するときは“番号通知”で必ず「霞です、ども」と名乗る。さらに母に対しては「ぼく」と言う。

*2:郵政民営化前に契約しているので「簡易保険」で誤りではない。