ある仮決定〜『特別支援教育』が問われている(3)

ある仮決定〜『特別支援教育』が問われている - 特殊学級から養護学校、そして特別支援学校の続報第2弾。
女子生徒の初登校に関する報道をクリップ。

動画を見る限り、女子生徒は教育課程に特別な配慮は不要のようで、やはりこの件は施設・設備の整備という面で論じるべき問題であるようです。

ところで、ちょっと驚いたのが、女子生徒は中学校に通学するとはいえ、通常学級ではなく、奈良地裁の決定後に設置が決まった肢体不自由特別支援学級に在籍し、県立養護学校*1で訪問教育を担当していた教諭が、同日付で下市中学校へ異動したこと。
これらはとにかく異例。学級の設置にせよ、教諭の異動にせよ、町教委・県教委ともに既に予算措置を含めた“下準備”をしていなければできないスピードです。県教委の「財政援助はしない」という表明は何だったのか、知事の“鶴の一声”で予算がついたのか、憶測の域を脱しません。

動画を見ると分かりますが、下市中学校は予想以上の傾斜地に建てられており、駐車場は砂利敷き。また、写真を見ると、電動ではなく手動の車椅子を用いています。これは、常時介護者が必要であり*2、多くの場面で2名必要*3だということです。

全教職員が、女子生徒を想定した約30キロの砂袋を持って階段を上り下りし、段差のある廊下で車いすを押す練習をしたとか、校長が全校生徒に「一人ひとりどんな支援ができるか、考えてください」と呼びかけたとか、下市中学校の対応は特別支援教育の理念に則ったものであり、評価に値します。
しかし、その高いモチベーションを女子生徒の卒業まで維持できるか、一抹の不安があるのも事実です。また、他県で前例があるものの、生徒の転校に合わせて職員を異動させたり、該当生徒の後に入学の見込みが無い状態で特別支援学級を設置した今回の“配慮”は、他の障害児やその保護者に一種の不公平感を生まないかも心配です。

蛇足

読売新聞の記事中で「認定就学制度」が紹介されていますが、施設・設備等のハード面、職員等のソフト面の双方で“受け入れ態勢が整った”小中学校に限って就学を認めるものであり、そもそも施設の整備が不可能だから起こった今回の件に関連して引用するのは明らかに誤りです。マスコミの「不完全な理解に基づく知ったかぶり」は今に始まったことではありませんが、非常に残念で口惜しい思いをさせられます。

*1:奈良県立明日香養護学校=肢体不自由特別支援学校

*2:左手だけでは、手動の車椅子を動かすことはできません。

*3:自家用車の脇から女子生徒の乗った車椅子を押そうとしたものの、諦めた様子が動画に写っています。