性教育

障害のために知的な発達に遅れ・偏りがあっても、身体的には年齢相応に成長する子どもたちに、どんな『性教育』をすればよいのか…
あまりにリアルな授業をして批判を受けた某養護学校(当時)もありましたが、私はこんな風に考え、特別支援学校や特別支援学級で実践してきました。

小学部低学年―お誕生会―

「成長する」ことを素直にお祝いすることで、自分自身を肯定的にとらえる気持ちを育てます。性教育の基本の一つ、『生命の尊重』の実践です。
「おたんじょうび、おめでとう!」「ありがとう!」
まだまだ気持ちが揺れ動いているであろう親御さんにも、素直に子どもの成長を喜んでほしい…そんな思いも込めて『お誕生会』を開きました。

小学部高学年―プライベートスペース―

教室の中に『着替えスペース』を作りました。誰かが着替えているときは、他の子はそこに入ってはダメ!先生も基本的には入らないというルールです。着替えに時間がかかりますが、“私だけのプライベートスペース”を作ることを優先させました。
「人に見られて恥ずかしい」という気持ちを育てるために、トイレも“プライベートスペース”として扱いました。「お尻、ちゃんと拭けてるかな?」と心配になりますが、グッと我慢です。

中学校―二次性徴のお祝い―

個人差がありますが、だいたいこの時期に二次性徴(精通・月経)が現れてきます。女性教員が女の子を、男性教員が男の子を見ていると「そろそろかな…」とわかるものなので、家庭と連携し、お祝いしてもらいます。小学部での「成長を喜ぶ」の応用編です。生徒によってはしっかり「思春期」に入っていることもあり、“家族に祝ってもらう”形をとりました。
女の子なら「お赤飯」で良いのですが、男の子は…?これは未だに良いアイデアが浮かびません。
学校では“個人指導”で、月経や精通があったときの手当ての方法について、同性の教員が教えました。その時、「他の人に見られると恥ずかしいけど、病気とか悪いことじゃないんだよ」ということを丁寧に教えました。

高等部―責任―

この時期になると、世間に飛び交う情報を聞きかじり、「結婚」「SEX」に関心を持つ生徒が増えてきます。そこで、進路指導と関連付けた学級指導を行いました。つまり…
「SEXをすると妊娠して、赤ちゃんが産まれる」
「赤ちゃんを産んだら、育てなければならない」
…という点を説明した上で“じゃぁ、どうする?”と生徒に考えさせるわけです。学級指導というよりは、道徳かもしれません。*1
すると、「誰とでもSEXしていいわけじゃない」「赤ちゃんを産んだらお金がいる」「結婚するには、ちゃんと働いていないといけない」といった意見が出てくることがあります。それをきっかけに『結婚に伴う責任』とか『自分の身体を守り、相手の身体をいたわる方法』とか、豊かな対人関係に関する話や社会的トラブルから身を守る方法に関する話に発展させていきます。
一回やればOKという内容でもないので、年間に数回、忘れた頃に繰り返しやっていました。


私が一つ気をつけていたのは、重い障害がある子どもにも同じ授業をしたということです。わからないかもしれないけれど、話しておく。わからないかもしれないけれど、教材を見せておく。特別支援教育の基本とは相反するかもしれませんが、自分自身の身体的な成長と密接な関係がある性教育に限っては大切なことかもしれないと、あくまで『経験則』ですが、そう思います。

*1:ちなみに、高等部には、小中にあるような「道徳」という授業はありません。←学習指導要領