作業学習「ひのきキューブ」

作業学習・木工班の今年度のメンバーは、細かい作業がちょっと苦手。そんな生徒たちが取り組めるような製品はないか…と風呂に入りながら考えていて「!」と思いついたのが“ひのき玉”。温泉地などでお土産として売られているもので、湯船に浮かべて香りを楽しむというもの。
これなら少々形が不ぞろいでも問題ないし、年間を通じて売ることができ、やがて香りがなくなるものなので継続的な販売も可能かも。
ということで、早速ホームセンターで檜の角材を買ってきて、自分で試作してみたのですが…市販品のように球にすることがこんなに難しいとは思いませんでした。はっきり言って専門の工具がないと無理です。
「とりあえず、檜の香りがすればいい」と割り切り、球にすることをあきらめて、形状は“サイコロ状”に変更。ネーミングも“ひのき玉”から“ひのきキューブ”に変えました。その上で、実際に生徒が作業に取り組めるよう工程分析してみました。

  1. 7.5cm角の檜材を2.5cm厚の板状に切断
  2. 2.5cm角のサイコロ状に切断
  3. 6つの面を研磨
  4. 面取り
  5. 袋詰め
7.5cm角の檜材を2.5cm厚の板状に切断
試作品は電動丸のこで切って作ったのですが*1、生徒に電動丸のこを扱わせるのはかなり危険です。そこで発想の転換。手挽きののこぎりで切らせることにしたのです。まっすぐ切るのが難しいという課題は、あらかじめ角材の半分程度まで切込みを入れておき、残りを生徒に切らせることで解決できました。手引きののこぎりを使うと、大きな動きで作業することができ、「終わった」ということが明確にわかるので、障害が重い生徒にも取り組ませることができます。さらに、3人組のうち2人が角材に腰掛けて固定し、1枚板を切ったら交代…というローテーションを組めば、体力・精神力的に集中の持続が難しい生徒でも、座って休憩していることが“仕事”になります。
2.5cm角のサイコロ状に切断
この工程は糸鋸を使用します。ここは作業に自信を持っている生徒に担当させます。『まっすぐ切るだけだから簡単!』と思えますが、実は厚い板を糸鋸で切ると刃が微妙にゆがむために、相当困難度が上がるのです。ただ、数をたくさんこなす工程でもあるので、ドリルトレーニングによる技術向上が期待できるのです*2
6つの面を研磨
紙やすりを使って削り、磨きます。「できた」という基準が一番わかりにくいのがここ。手で触って確かめるのが一般的ですが、より直感的に判断できるように、スタンプ台を使いました。サイコロ状の材料を軽くスタンプ台に押し付けると色がつきます。その色が消えたらおしまい、という基準を作ったのです。また、小さな板に両面テープで紙やすりを貼り付けた工具を使うことで、ほぼ完璧に平面を磨き上げられるようになりました。
面取り
紙やすりを使って角や辺を丸めます。この工程でもスタンプ台を使って色をつけ、その色が消えたらおしまい、という基準です。はっきり言って、角が丸まっていようがいまいが、製品としてはなんら問題がないので、『作業が好きで、次々取り掛かるのだけれど、完成度はイマイチ』なんて生徒に担当させると、たくさんほめてあげることができます。
袋詰め
ここまでの工程は完全にライン化しています。そこで、最後にみんなで袋詰めすることで“成就感”“達成感”を味わわせることにしました。

このような工程設定をすることで、8名の生徒を1人の教員で指導することが可能になりました*3。また、作業中に生徒が“先生待ち”する場面も減り、生徒の活動量が増えました*4
現段階ではお世辞にも“売れる製品”とは言いがたい程度の完成度ですが、7月の授業参観での販売デビューが目標です。

*1:糸のこでは3cmの厚さまでしか切れません。

*2:製品の性格上、少々曲がって切っても不良品にはなりませんし。

*3:これまではせいぜい3〜4人に1名の教員、時にはマンツーマンで指導していました。

*4:事前の仕込み(角材に切れ込みを入れる)とか、8人分の作業ノートチェックとか、教員の活動量も増えますが…