特別支援学校の自閉症児

今日は県特別支援教育研究協議会に行ってきました。
午後の分科会は、特別支援学級と特別支援学校と合同の『知的障害を伴う自閉症児への支援』。提案者からは、示唆に富む情報提供がありました。

基本的な考え方

  • 安定した環境から効果的な学習が生まれる。
  • 安定した環境とは、わかりやすく時間と空間に余裕のある状況をいう。
  • 効果的な学習(環境)があるからこそ、獲得した学習(行動)の広がり(般化・維持)へと進むことができる。

…つくづく、自閉症児に限っては特別支援学級がうらやましく感じました。現行の法制度上、特別支援学級だと自閉症児のために「情緒障害学級」を作ることができます*1。つまり、一つの教室という余裕のある空間があてがわれるので、目的別の教室内パーティションをつくったり、クーリングダウンスペースをつくったり、掲示物を構造化したり…そういう配慮・支援が容易にできるわけです。
ところが、特別支援学校においては『情緒障害』に関する規定はありません*2。知的障害特別支援学校の場合、知的障害以外の障害*3がある子どもを対象に「重複障害学級」をつくることはできますが、自閉症は“知的障害以外の障害”に該当しないという解釈が一般的です。保護者を始め、まわりの理解があれば“自閉症児の学級”をつくることも可能*4ですが、うちの学校では難しい状況です。それに加えて、ただでさえ教室が足りなくて、いくつかの“学級”が一つの教室を使っているのですから、クーリングダウンスペースすら確保できず、“余裕のある空間”なんて望むべくもありません。
そんな悶々とした思いでいたもので、司会者から指名されたときもつい愚痴をこぼしてしまったのですが、県教育委員会の指導主事からこんなコメントをもらいました。

県としても、特別支援学校では教室が不足し、自閉症児にとって学びやすい環境が作りにくい状況にあることは把握している。ただ、特別支援学級は『複式学級*5』で編制されるのに対し、特別支援学校は学年ごとに学級が編制できることを思い出して欲しい。つまり、より多くの教員を配置することが可能であるこということである。
特別支援学級で難しいとされる『個別指導』が比較的容易にできるメリットを活用し、授業に臨んで欲しい。

で、提案者からも追加の情報提供が。

子どもとのかかわり方の基本

  • 応用行動分析の手続きは有効
    • 行為の直後にほめる
    • 直後に短くしかる
    • 『消去曲線』〜一時的に“問題行動”が増えても、あわてない。
  • 今の行動をどうしようとして接しているのかを自分の中で明確に
    • 『今、行動をおさめたい』のか?
    • 『この次、同じような状況で生じないようにしたい』のか?
    • 『今やらせておきたい』のか?
    • 『次回に自分でできるようにしたい』のか?

すっきり納得できたわけではありませんが、とりあえず“無いものねだり”から脱却して、今の環境でできることは無いか、もう少し考えてみようという気にはなりました。

*1:学校教育法第81条2

*2:学校教育法第72条

*3:運動機能とか、内部疾患とか…

*4:例:東京都立中野特別支援学校

*5:いくつもの学年の子どもたちが一緒の学級