友田准教授らの共同研究に思うこと

朝日新聞NHKで報道され、いろいろなところに引用されているようですが…

子どものころ長期にわたり強い体罰を受けた人は、受けていない人より脳の前頭葉の一部が最大で約19%縮んでいるという研究結果を、熊本大大学院医学薬学研究部の友田明美准教授(小児発達社会学)が米ハーバード大医学部との共同研究でまとめた。体罰と脳の萎縮(いしゅく)の因果関係を実証した研究として、体罰のあり方に一石を投じることになりそうだ。
http://www.asahi.com/science/update/1024/SEB200810230015.html?ref=rssウェブ魚拓

この研究結果に触れ、ちょっと思うことが。
特別支援学校では、障害が重い子の他害行為を止めるために身体拘束をしたり、移動を促すために強く手を引いたりすることは、よくあることです。決してそれらは“体罰”ではありませんが、本人の意に反して強い身体接触を伴って行動を制限されるわけですから、子どもの側がその時に受けるストレスは“体罰”を受けたときに近いものがあるかも…と思ったのです。
教員の側からすれば、事故を防ぎ、問題行動を減らそうと思ってやっていることが、実は衝動行動を助長させる結果になっているとすれば、実に皮肉なことです。私は、中学〜高等部段階になれば、ある程度の“厳しさ”をもって接することがあっても良いと思っていましたが、考えを改めなければならないかもしれません。
友田准教授(研究室のHPはこちら)は、この研究結果を筑波大学で開かれている『「都市化社会に代表される社会の変容が脳の健全な成育におよぼす影響についての二国間研究」学術集会*1』で発表されるとのこと。
筑波大学大学院人間総合科学研究科感性認知脳科学専攻行動神経内分泌学研究室(長っ!*2)のサイトに開催案内がありました。明日(10月25日)の10時から発表をぜひ聞いてみたいと思ったのですが、残念ながら明日は仔ダヌキの小学校の“秋祭り”。つくばには行けません。発表内容のレジュメがネットのどこかに掲載されることを待とうと思います。


ところで…


このニュースに関して、朝日新聞の見出しはひどいです。『長期体罰の子、脳が萎縮』って…。脳が萎縮するんじゃありません。記事を読めば、脳の一部である前頭葉のさらに一部、前頭前野内側部が萎縮しているとわかりますが、ヘッドラインだけではまるで大脳を含めた脳全体が萎縮しているように読み取れます。
また、NHKの放送でも画面にずっと“体罰で脳がいしゅく”と出されていて、こちらも脳全体が萎縮しているかのような印象が残りました。
見出しだけに反応して、某巨大掲示板では

確かに脳みそがギューッと縮むような感じになってたよ。
大きい音をわざと出して注意を喚起しようとするような人が
死ぬほど苦手だ。今でも。威嚇されてるとしか思えない。

などという書き込みが。ここまで明らかに誤解されると失笑してしまいますが、こういう誤解が思わぬ偏見や差別につながると考えるのは取り越し苦労でしょうか?

*1:Japan/China Symposium 2008 Strategies to Reduce Risks on the Brain Development Contingent to Urbanization

*2:ちなみに、友田准教授の正式な肩書きは『熊本大学大学院医学薬学研究部小児発達社会学准教授』。医学関係は専門分野がものすごく細かく分かれますからね…