なぜ高等学校に特別支援学級ができないのか

先日、県内の特別支援教育に携わる“有志”による私的勉強会に参加してきました。そこで話題に上がったものの一つに「高等学校に特別支援学級が設置されない理由」がありました。
学校教育法では

小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校には、次の各号のいずれかに該当する児童及び生徒のために、特別支援学級を置くことができる。(以下略)
<第75条の2>

と規定されているので、高等学校にも特別支援学級を設置することはできるはずです。にもかかわらず、実際に設置されないのは、学校教育法施行規則がネックになっているからだ、というのです。

小学校若しくは中学校又は中等教育学校の前期課程における特別支援学級に係る教育課程については、特に必要がある場合は、第二十四条第一項、第二十四条の二及び第二十五条の規定並びに第五十三条から第五十四条の二までの規定にかかわらず、特別の教育課程によることができる。
(第73条の19)

第24条第1項うんぬんというのは『学習指導要領にのっとった内容の授業をしなければならない』ということを意味しています。
乱暴にこの条文を翻訳すると『特別支援学級では、学習指導要領に書かれている内容について、必ずしも全部やらなくてもよい』ということになります。この規定が根拠となって、小中学校の特別支援学級では“学年にかかわらず、子どもの実態に合わせた授業”をすることが可能になり、校長が該当の子どもの「卒業」を認めることが可能となるわけです。
ところが、この規定には高等学校は含まれていません。ということは、仮に高等学校に特別支援学級を作ったとしても、一般の高校生と同じ内容・時間数の授業を行わなければならないということになります。

(6) 学習の遅れがちな生徒,障害のある生徒などについては,各教科・科目等の選択,その内容の取扱いなどについて必要な配慮を行い,生徒の実態に応じ,指導内容や指導方法を工夫すること。
(「高等学校学習指導要領」総則第6款5 教育課程の実施等に当たって配慮すべき事項)

とあるので、教材や指導方法には工夫の余地がありますが、「学習指導要領に定められた単位を履修しなければ、卒業は認められない」*1のですから、現実には特別支援学級を設置することは不可能…という解釈が成り立つわけです。
ちなみに、特別支援学校の高等部であっても、かつての“盲学校”“ろう学校”“肢体不自由養護学校”“病弱養護学校”については「卒業に必要な単位数」が学習指導要領に明記されています。(総則第2節第2款第1

高等学校・高等部は義務教育ではないと言ってしまえばそれまでなんですが…

*1:今年の初めの“世界史未履修問題”を思いおこして下さい。