勤続5年、月給8万

先日、卒業生たちに誘われ、一緒に飲む機会がありました。
前々任校の卒業生たちで、22〜25歳の5人。皆、それぞれの“企業”に就職し、給料をもらっています。

さて、話が弾む中で給料の話題になりました。中学校を卒業後、養護学校(当時)高等部を経て、日本中の誰もが知っている外食チェーンの特例子会社に勤めているA君。勤続5年目の青年です。

霞「給料日はいつなの?」
Aくん「28日です。」
霞「で、いくらくらいもらっているの?」
Aくん「8万円です。」

…ちょっと、いや、かなりびっくりしました。特例子会社ではありますが、初任給は10万円程度あったはずです。さらに話を聞くと、最近は3時あがり*1の日が多く、家に帰るとお母さんから渋い顔をされているとか。
ここで、ピンときました。療育手帳*2を持っている人を採用した企業には、厚生労働省から助成金が交付されます。『大阪府/ ご指定のページは移転しました。』と呼ばれるものです。かつては給与の1/2、平成19年の法改正以降は25〜40万円の定額助成なのですが、ここに落とし穴がありました。実はこの助成金、期間が決められているのです。重度の人で1年6ヶ月、それ以外だと1年間で交付が停止します。
するとどういうことが起きるのか。
残念ながら知的障害がある人の作業効率は健常者に比べてどうしても劣ってしまいます。企業からすれば、働かせれば働かせるほど損をするわけです。助成金が交付されている間はその穴埋めも可能ですが、助成金がなくなったら…そこから先は憶測になってしまうので、ここで明言することは避けましょう。ただ、先日見学に行った別の特例子会社でも、勤続年数が長い人ほど“フルタイム”で勤務している人の割合が減っている印象がありました。

特別支援学校の進路指導をする際、企業に就職させるケースでは初任給はチェックしますが、その後の“ベースアップ”についてはほとんどノータッチといえる状況です。考えてみれば、今のご時勢、ベースダウンは珍しいことでもないし…。
幸い、Aくんは国民年金の障害基礎年金を受給しているため、年金と合わせれば何とか生活していけるだけの収入はあります。また、正社員として勤務しているため、将来は厚生年金の受給対象にもなります。それにしても、勤続5年で月給8万とは…。

企業へ就職できた生徒を「経済的自立を果たしたエリート」と考えていた霞にとって、少なからずショックな話でした。

*1:この会社の“定時”の退勤時間は5時です。

*2:いわゆる『愛の手帳』『みどりの手帳』